四物湯は補血の基本方剤 

四物湯(しもつとう)

〇種類

補血剤→血(けつ)を補う処方

 

〇組成

熟地黄、当帰、芍薬、川芎

 

〇処方解説

熟地黄 補血→血を補います

当帰  補血活血→血を補い、瘀血をとります

白芍  斂陰養血→陰液を収斂し、汗を止め、血を養います

川芎  活血行気・祛風止痛→気血を巡らせる(これを血中気薬とか表現してあったりもします)、風邪を散らし、痛みを止めます

 

〇用法

煎じて飲んで下さい。

 

〇効能

補血調血→血を補い、そして巡らせます。

 

〇主治

衝任虚損を治療します。ここで、衝任とは、衝脈と任脈を指します。これは、人体の気血の流れ道である「経脈」で、衝脈も任脈も胞宮(子宮)を通っています。衝脈は月経をコントロールしています。任脈の方は、女性の胞宮から起こり、月経、妊娠、出産のコントロールをしています。そして、衝脈は、女性の胞宮から起こり、「血海」と呼ばれます。月経や妊娠は衝脈と任脈が関与しているので、月経の異常や不妊症などの問題は、この衝脈と任脈に十分な気血が流れていないからだと考えることができます。そこで、じゃあそれを治そうじゃないか、というわけです。ちなみに、この方剤で治療するのは血がメイン。そういう理屈で、生理不順やお腹の痛み・血の塊が混じる・不正性器出血・産後の子宮出血が止まらない・胎動不安・下腹部が固くなって痛みがある…などの症状に効果が期待できるということになります。けど、この方剤は血がメインターゲットなのでそれ以外の原因の方には、当然あんまり(全くかも…)効きません。

 

〇病機

血が不足して、滞った状態

 

〇方意

補血の主力となる方剤です。ちなみに、これは『金匱要略』という昔の本に出てくる芎帰膠艾湯から、阿膠、艾葉、甘草を除いてつくられました。様々な血虚証の基礎となっています。これを基礎にすえて、方剤を証によって組みかえるのは、漢方の常套手段といっていいでしょう。

先ほど「主知」で述べたように、衝脈が虚損すると生理量が減り、色が淡くなり、生理が遅れます。さらに下部に冷えによる生体反応の停滞が起これば(下焦寒滞)、下腹部(少腹)に痛みが生じます。また、胃腸系の弱り(脾虚)により、血液を血管外に漏れ出ないようにする(摂血、脾不統血というやつです)ことができず、腎虚で衝任不固(腎の封蔵、固摂機能の低下による。物質を正しい位置に留めておく機能の低下)であれば、不正性器出血(漏中漏下)等が続発し、血の塊が混じる・下腹部が固くなって痛むなどの症状も起こることがあります。必発ではありませんが、衝任に何も問題もない方に比べれば発生確率が上がるのは必然だろうなぁと思います。

そこで、この方剤の大きな構成は、補血を当帰、熟地黄、芍薬で行い、活血を川芎で行う形になっています。こんな風に血を補いながら、活血する事で、血を補っても、血が滞らないように構成されています。

先ほど、述べましたように、四物湯は補血の基本方剤なので、これをアレンジしていろいろな証にあったようにすることができます。例えば…

血虚の程度がひどければ、熟地黄を増量する、何首烏を加える。

月経痛がひどければ、芍薬を増量する、延胡索を加える。

熱証があれば熟地黄を生地黄に変える、牡丹皮を加える。

瘀血が強ければ桃仁、紅花を加える。

などなど、の方法で対応させていくことができます。

他にも、四物湯が胃にさわったりするときは人参、白朮、黄耆などの補気薬を加えることができます。このアレンジは、脾気虚で脾不統血(出血が止まらないとき)にも用いることができます。ちなみに、普通の月経過多や出血には阿膠、艾葉、甘草を加えることができます。これが、最初に出てきた芎帰膠艾湯になります。いれにしろ、すべて血虚ベースであることが前提です。