浮腫の上中下

(薬剤師会に掲載したものを編集)
台風の影響で延期となった、
10月14日(日)の山口県伝統生薬研究会の「腎陽虚」を中心とした講演は、
無事終了することが出来ました。
厚く御礼申し上げます。
また、別のメーカーになりますが、
11月6日(アパホテル<山口防府>)の
山口小グループ漢方研究会の講師もさせて頂きました。

突然ですが、今日は浮腫(ふしゅ)を分類してみようかと思います。

今回は五臓(ごぞう)弁証(べんしょう)ではなくて、たまには三焦(さんしょう)弁証(べんしょう)を行っていきます。
そんなので大丈夫か?という「御意見」もあるかと思いますが、
弁証(べんしょう)の種類は色々です。

ケースに応じて、
使いやすいものを選べばいいと思います。

例えば、「文章書き」にはふつうワードを使いますが、
表計算が沢山あるならばエクセルで書くのも
たまには悪くはないでしょう。

(↓五行ごぎょう学説による五臓の相関図。でも今回は三焦弁証です)

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まず、漢方でいう三焦(さんしょう)とは何かと申しますと、
(大きくは)人間の体を上中下で分けたものです。
それぞれを、上焦(じょうしょう)中焦(ちゅうしょう)下焦(げしょう)といいます。

ちなみに上焦(じょうしょう)中焦(ちゅうしょう)は横隔膜、中焦(ちゅうしょう)下焦(げしょう)臍部(さいぶ)(おへそ)で分けられます。

まず、上焦(じょうしょう)。ここは主に肺が責任者となります。

ちなみに、肺と言っても、
後に出てまいりますが、
漢方ではガス交換以外の役割も担っております。

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では、ここがやられた場合の浮腫にどう対抗するかというと、
越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)あたりがいいのではないかと思います。

腎炎や関節リウマチなどに使われる処方ですが、
漢方では風邪にも使います。

風邪をひいてから、熱証で瞼と顔に浮腫が起こるときこそ、
散風清熱・宣肺行水(せんぱいこうすい)(せんぱいぎょうすい という人もいるかな)できるこの処方の出番です。

中身は、麻黄・生姜・石膏・白朮(びゃくじゅつ)大棗(たいそう)・甘草というラインナップ。

この中の麻黄宣肺利水(せんぱいりすい)するので、通調水道(つうちょうすいどう)が改善されることになります。

ちなみに、宣肺(せんぱい)とは肺衛の表邪(ひょうじゃ)を疎散させることと、
漢方的には表現されますが、平たく言えば外から入ってきた
細菌やウィルスなど(外邪(がいじゃ))を追い出すことを意味します。

利水(りすい)は利尿作用も含みますが、
それ以外の水分全般の代謝を改善することです。

そして、通調水道(つうちょうすいどう)とは肺がつかさどる水液代謝のことで、
浮腫との関係が見過ごされやすい部分です。

西洋医学でいうところの肺とはだいぶ異なった考えだと思います。

用語も如何(いか)にも東洋医学537714

(山口県も立派な東洋)

といった感じです。

そして、石膏
言わずと知れた(?)とても冷やす薬。これによって熱を冷まします。

しかし、メイン生薬がこういった攻撃重視型なので、基本的に長期服用には適しません。

腎炎に効くことが知られていますが、
この処方なら正確には急性の腎炎ということでしょうか?

まあ、絶対長期投与しないというものでもなく、
例えば、関節リウマチの患者さんに
鎮痛剤的な意味での使用は、NSAIDs
(非ステロイド性抗炎症薬。アスピリン・ロキソニンなどの一般的な解熱鎮痛剤がこれに当たります)
を連日飲む事に比べれば、患者さんの負担が減る利点などがあるでしょうし、
慢性の腎炎でも十分かつ適切に腎を補う工夫を
加えれば成立するかと思います。

次に中焦(ちゅうしょう)。臓腑だと()が責任者です。

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(漢方でいう()は胃腸系の事をいいます)

ここで使われる処方に、有名な五苓散(ごれいさん)があります。

ハイ!典型的利水剤です。

ちなみに、すこしアレンジした茵陳五苓散(いんちんごれいさん)なるものもあったりします。

名前からわかるように、五苓散(ごれいさん)に茵陳蒿をプラスしてあるので、
肝胆の湿熱をとる作用が追加されます。

お酒を飲んだときは「より」適切となるかもしれません。

最後に下焦(げしょう)。ここの責任者はやっぱ腎ですね。

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よく使われる処方に牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)があります。

中身は八味地黄丸に膝と前子を加えたものになります。

だから、・腎気丸。

そして、追加された牛膝・車前子には利水作用があるので
浮腫に対してより効果が期待できます。

腎を補う八味地黄丸のベースがあるのがありがたいところです。

そうそう、牛膝にはちょっと面白い「引水下行(いんすいかこう)
」と表現される効能があります。

それは何かといいますと、
他の生薬の薬効を下方に導いて下半身の疾患に効果高めるというものです。

でも、あんまりこだわらなくていい…と私は思います。

あとは真武湯

こちらは、うってかわって短期処方用。

何故なら、先の八味地黄丸ベースのような、補腎が無いので…。

なんだか色々書きましたが、要は一口に「むくみ」といっても、
沢山種類分けできるということです。

むくみもなかなか侮れません。

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余談ですが、尿毒症治療の基本方剤に
大黄附子湯(だいおうぶしとう)というものがあります。

これは中国で使われている処方(日本にもあるにはありますが…)で、
煎じ液を、浣腸する(!?)というものです。

たぶん日本じゃぁ、なじまないでしょうね…。

(著者 薬剤師 国際中医専門員A級合格者 山内漢方薬局 山内)