「肺癌(ステージⅡ~Ⅲ)80才台 女性」

「肺癌(ステージⅡ~Ⅲ) 80才台 女性」

今回のお話は、こちらで実際に治療されている方のお話です。

無論、個人情報は載せられませんが、
それを除いては、本人さんと付き添いの方の両者から、
掲載の御同意を頂いております。

この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

故に、このお話は、
御本人様の感情を考慮し、
固めの文体としております。

同じような方の一助になることを願っています。

〇1回目来局(2016年の事です)

肺癌のお母さんの相談で娘さんが来局されました。

この時、御本人様はおられず、
症状のみをお伺いしました。

概要としましては、
まずは、とにかく食欲がない。

直近の血液検査でA/G低値。

便秘ぎみ、全身が冷える。

抗癌剤のイレッサは副作用、
特に(先の)食欲不振で、
現在は中止。

イレッサはかなり癌の縮小~維持の効果があったので、
再開を希望されているとの事でした。

次回は、正確を期すため、
本人を連れてくるとの事。

ここでお出ししたのは、
麦味参ばくみさん1日2包、晶三仙しょうさんせん1日3包」
でした。

麦味参ばくみさん気陰両虚きいんりょうきょを改善する方剤ほうざいなので元気がつき、晶三仙しょうさんせん消導薬しょうどうやくなので直接的に食欲増進作用があります。

この時の自分の考えは、
又聞きによる「欠点を回避する薬」で、
御本人様が来られたら、
おそらく「参馬補腎丸じんばほじんがんが最有力ではないか」などと、
この時点では考えておりました。

〇2回目来局

娘さんと御本人様ともに来局されました。

お話を伺うと、
食欲はかなり出てきたとおっしゃられ、
病院の処方で、
八味地黄丸はちみじおうがん、酸化マグネシウム、プロクロルペラジン、ランソプラゾール(要所の薬のみ掲載しております)、
そして、ニンニクの健康食品を飲まれていました。
舌を拝見したところ、
黒膩苔こくじたい、舌こう、ややばんはくあんでした。

ここで、注釈を入れますと、
黒膩苔こくじたい」とは舌の上の苔が厚く油っぽくなっていて、
黒く変色している事をいいます。

さらに詳細に言うならば、
この方は喉の奥の方に多く黒膩苔こくじたいがあり、
表面は乾燥している状態でした。

かなり危険な舌象として知られ、
たまたま私は何回か見たことがあるのですが、
一生に一度も見たこともないという薬剤師が大半の様です。

そして、「舌こう
これは漢方でいうところの「熱」が、
極まっている時に見られるものです。

漢方ではこうこうと言い分けますが、こうもかなりのものですが、
こうはもっと上位の熱を現しています。

この二つが特に重要な情報で、
今だから申し上げますが、
極めて危険な状態でした。

他の部分も、簡単にご説明いたしますと、
ばんは舌の大きさが大きい事、
あんは暗い色合いや、紫がかった舌を意味します。

また、はくは舌質(舌の肉質の部分)が薄い事を略して表現しています。
漢方で慣例的に言われている表現とは少し違うかもしれませんが、
舌の厚みが小さい事は、
物質的な不足がある事を示唆し、
故にそれを補うべきものが必要だという事になります。

要約させていただくと、
この方の状態は、
気血きけつがかなり傷つき、
陽盛格陰ようせいかくいんの状況にあり、
瘀血おけつといられる、血のよどみが強い可能性が高いと言えます。

そしてこの中の重要ポイントは、
陽盛格陰ようせいかくいん」です。

何故なら、
全身の冷えの症状の訴えがあるにもかかわらず、
極端な熱証ねっしょうを示しているこの舌象ぜつぞうは、
熱邪ねつじゃが体の奥底に留まりつづけることにより、
陽気ようきと言われるエネルギーを密閉状態にして、
陽気ようきがきちんと全身に配られなくなっていることを示唆しています。

かなり稀で、
危険なケースと言えます。

基本的に漢方は冷えているという訴えがあれば、
温めるのが鉄則ですが、
これはそういう訳には参りません。

こういった状態を真熱仮寒しんねつかかんといい、実質は熱なので、
熱を消し去る(漢方では「清する」と表現します)「清熱せいねつ」をすみやかに行う必要があります。

ここで、大きく方針転換を致しました。

そもそも気血きけつ等が相当傷ついて、瘀血おけつ(血の濁り)などもありますが、
陽盛格陰ようせいかくいんすみやかに解除することが、
最優先の課題です。

まず、八味地黄丸はちみじおうがんとニンニクは、
中止を推奨しました。

幸い八味地黄丸はちみじおうがんの方は、
コミュニケーション能力の高いDrだったので、
容易に変更してもらえました。

ここで代わりに処方されたのが、
患者さんの代理人のご希望を考慮して
人参養栄湯にんじんようえいとう
です。

使用に大きな問題点はないので、
良いのではないかと思います。

方剤を組み合わせて、
この方に合うようにする事が十分可能です。

そもそも人参養栄湯にんじんようえいとうは、
肺癌の適応外処方として知られており、
漢方でいう
気血双補きけつそうほ
が出来る方剤です。

故にこれをベースとして、
これを
「対陽盛格陰ようせいかくいん使用」
にしていく事が「私の課題」という事となります。

ここで気血双補きけつそうほについて少々注釈をいれさせて頂きます。

まず前提として、
漢方ではエネルギーをよう
物質をいん
と対比して捉えます。

ようを包括するする概念で、
いんけつを包括する概念です。

つまり、ようの一部で、
けついんの一部です。

ざっくりとまとめますと、
陰陽いんようとは現代風にいえば、
「最重要パラメーター」と呼べるものです。

そして、人体に必要なこれらのもの不足をきょと言います。

そして、気虚ききょ陽虚ようきょの軽いもの、
血虚けっきょ陰虚いんきょの軽いもの、
といった位置付けになります。

裏を返せばそれぞれを補う薬である補気薬ほきやく補血薬ほけつやく
補陽薬ほようやく補陰薬ほいんやくの簡易版という関係にあります。

そして、気血双補きけつそうほ(剤)は、
補気ほき補血ほけつの両方を1度で行えるものとなります。

使い続けても、陰の方にも陽の方にも、
大きく偏らないという特徴があります。

いうなれば、基礎的な体力を充足させるのに
オールラウンドプレーヤーのような役割です。

そのような訳で「ベース」と表現した次第です。

ここらで話を戻しますと、
この方にお出ししたのは、
延寿丸えんじゅがん(大黄剤)便秘時には積極的に使用、
百潤露ひゃくじゅんろ1日2包、白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日2包、晶三仙しょうさんせん1日3包」
です。

延寿丸えんじゅがんが積極的使用となっているのは、
陽盛格陰ようせいかくいんで便秘がある場合、
承気湯じょうきとう類でしゃすべきだからです。
(ご興味のあるかたは、中国語になってしまいますが、
中国のWikipedia的な「百度百科」の「陽盛格陰」の項に出ております。)

百潤露ひゃくじゅんろ補陰ほいん
すなわち潤いを与えて熱を制御するために使い、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそうは、
清熱せいねつ作用と抗癌作用を併せ持つので,
これを選択する事としました。

〇3回目来局

舌象ぜつぞう黄膩苔おうじたい(前面)~黒膩苔こくじたい(奥)、舌淡紅たんこう、ややあん

冷え症状の増加は無いとの事でした。

本人曰く、前回は言い忘れていたけれど、
だいぶ以前から、病院での採血後、
出血によって翌日ごろに、大きな黒いアザになるとの事。

病院で処方してもらえた人参養栄湯にんじんようえいとうも継続中との事。

少しお腹を下しぎみとなっても、
下剤の「瀉熱しゃねつ」を意識し、
延寿丸えんじゅがんを、
あまり気にせずに使用していただけているとの事でした。

お出ししたのは、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包、晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日2包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)」
です。

百潤露ひゃくじゅんろ陰虚いんきょ改善より中止しました。

人参養栄湯にんじんようえいとうがよく効いているのだと思います。

ところで、これは漢方の話ではないのですが、
前回帰られるときの歩幅が狭いのが気になりました。

お薬手帳を拝見していたので、
錐体外路すいたいがいろ症状の疑い」
があるのではないかというお話もしました。

怪しいのはプロクロルペラジンというお薬で、
現在は吐き気が全然無いので、
必要ない可能性が高いことをご説明したところ、
別の薬効の薬と勘違いなされて、
ずっと飲んでいた事が判明したので、
後日中止となりました。

プロクロルペラジンは吐き気以外に、統合失調症とうごうしっちょうしょうに使うお薬で
この方は、抗癌剤中止後は吐き気もなく、
統合失調症とうごうしっちょうしょうでもありませんので、
副作用だけを頂くという訳には参りません。

統合失調症とうごうしっちょうしょうの薬はドーパミンを介して行うものがほとんどで、
やり過ぎると、薬によって起こるパーキンソン病、
すなわち薬剤性パーキンソニズムとなります。

蛇足ですが、抗パーキンソン病薬の過剰投与では、
統合失調症とうごうしっちょうしょうの症状である幻覚、妄想が現れやすくなります。

いささか極端な表現になりますが、
統合失調症とうごうしっちょうしょうを治療しすぎれば、パーキンソン病様の症状が、
パーキンソン病を治療し過ぎれば、統合失調症とうごうしっちょうしょう様の症状が、
発現するという事になります。

〇4回目来局

検査値はA/G及びアルブミンが、わずか低値レベルにまで回復。

採血後のアザは改善されてきたとの事。

今回は代理の娘さんだけ来局されたのですが、
スマートフォンで舌の写真をとって来られました。

現代はこんなこともできるようになり、
大変便利になりました。

舌象ぜつぞうは、黄膩苔おうじたい、舌こう淡紅たんこうにも変動しやすいよう、経過観察)ややあんでした。

服薬で寒気増してきたりしていないかを確認したところ、
そういったことは無いとの事。

このところ気になるのは、
2週間前から、胸に圧痛を感じるとの事(頻度は4日に1回程度)。

癌は画像所見で(抗癌剤を中止以降も)大きくはなっていないと言われました。

そこで、採血後のアザが改善したことから田七人参でんしちにんじんは減量、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう黄膩苔おうじたい、がある事と、
抗癌作用をもっている生薬である事から増量しました。

お出ししたのは、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日6包、晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日1包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)」
です。

〇5回目来局

舌象ぜつぞう黄膩苔おうじたい、舌淡紅たんこう。症状は安定。胸痛消失。イレッサの再開を予定。

お出ししたのは、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日6包、晶三仙しょうさんせん1日3包(180包サイズで購入)、田七人参でんしちにんじん1日1包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)」
です。

〇6回目来局

黄膩苔おうじたい、舌淡紅たんこう。前回とあまり変わらずに安定。

抗癌剤を再開、3日に1回で始める事になった。

お出ししたのは、前回と同じではありますが、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包、晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日1包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)」
です。

ただし、白花蛇舌草はくかじゃぜつそうは1日3包に減らしました。

〇7回目来局

舌象ぜつぞうは薄黄膩苔おうじたい。冷え症状が少しあるが、困っているほどではない。抗癌剤は3日に1回から、2日に1回に増量することになった。血液検査では、カルシウム・血色素・アルブミンがやや低値、癌細胞の大きさはかわってはいないとの事。

お出ししたのは、前回と同じではありますが、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包、晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日1包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)」
です。

8回目来局

このあたりで中間のまとめを入れさせて頂きます。

併用薬は、
ウルソ、ハチアズレ、アンテベートとヒルドイドソフト混合の塗り薬、抗癌剤、アムロジピン、トビエース、芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとう(足がつった時)、レバミピド、オロパタジン、そして、ベースライン漢方というべき人参養栄湯にんじんようえいとうです。

芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとうが足がつった時だけの頓用なのは、
こちらとしては実はありがたい事です。

甘草かんぞうは重複しやすく、
過量になりがちな生薬です。

特に芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとうは、甘草かんぞうの量が多いものなので、
連用しづらいのです。

また、過剰なときはカリウムの値が異常を示すのですが、
今回も血清カリウム値の低下はみられないので、
とくに甘草かんぞうの悪影響はなさそうです。

血液検査は蛋白、アルブミン、カルシウム、ヘマトクリットがやや低値です。

舌象ぜつぞうは、ややあんこう無苔むたい歪斜わいしゃでした。

ここで気にかかるのは、

歪斜わいしゃ舌です。

これは漢方で中風の前兆として有名なものです。

中風とは現代でいう、脳血管障害による半身不随・片まひ・言語障害・手足のしびれ・麻痺などをいいます。

この方はまだ脳血管疾患は起こされていなので、

予防できるものはなるべく予防しておきたいです。

当然ですが、歪斜わいしゃ舌は脳梗塞などをされた方にも多く見うけられます。

ここで先の「人参養栄湯にんじんようえいとう」の構成を振り返ってみますと、
人参にんじん白朮びゃくじゅつ茯苓ぶくりょう甘草かんぞう当帰とうき芍薬しゃくやく川芎せんきゅう地黄じおう桂皮けいひ黄耆おうぎ陳皮ちんぴ五味子ごみし遠志おんじ
です。

アンダーラインのところが十全大補湯じゅうぜんたいほとう薬味やくみで、
人参養栄湯にんじんようえいとう十全大補湯じゅうぜんたいほとう川芎せんきゅう+(五味子ごみし陳皮ちんぴ遠志おんじ
といった構成になっています。

+の部分は安神(精神安定)、
去痰の作用をつかさどっています。

かなり十全大補湯じゅうぜんたいほとうに近いものです。

十全大補湯じゅうぜんたいほとう気血双補きけつそうほの代表方剤で、
けつを補うベースラインとして、
非常に使いやすい処方といえます。

ただ、ここで問題になるのが、
川芎せんきゅうが去してあること(-川芎せんきゅう)で、
この方の舌象の「暗」の色合いに対して、
活血するべき生薬が無いことを意味しています。

しかしながら良い面もございます。

それは採血後の出血においてアザができるという症状があるので、
活血剤かっけつざいである川芎せんきゅうはが去してあるのは、
出血を助長する可能性をあげないので、
良いといえるかもしれません。

しかしながら、瘀血を出血があるからといってなにもしないのも考え物です。

これらを踏まえると、
最善手は活血止血かっけつしけつ作用をもつ田七人参でんしちにんじんだと思います。

活血かっけつ止血しけつを併せ持つ、
この漢方唯一といえるこの生薬は、
何物にも代えがたい特性です。

中風(脳血管疾患)の予兆である歪斜わいしゃに対して、
外すことが出来ないものです。

川芎せんきゅうが去してあるという欠点を埋める意味も大きいです。

ところで、今回の訴えの中心となるのは、
暑くなってきて体に痒みが出てきたという事です。

暑い時と夕方に増悪傾向があるという事。

お出ししたのは、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包、晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日1包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、そして、竹葉石膏湯ちくようせっこうとう1日3包」
です。

竹葉石膏湯ちくようせっこうとうは気管支炎などに使われる清熱せいねつの方剤で、
清熱せいねつにおいて特筆すべき有用性がある事と、
気陰双補きいんそうほできることからこれを選びました。

漢方薬は証によって、
色々な使い方ができます。

保険処方では適応外で、保険が効かなくてレセプト審査で切られたりしますが、
そもそも自費ですので、切られる心配はありません。

処方と言えば、使用されているイレッサはEGFR阻害剤そがいざいと言われ、
上皮成長因子受容体(EGFR)をブロックすることで
抗癌作用を発揮するものです。

しかし、同時にEGFRは皮膚の表皮基底層ひょうひきていそうなどにも発現しているので、
高率に皮膚障害を起こす事が知られています。

なんでもイレッサのせいにするのは良くないのかもしれませんが、
確率は低いとはお世辞にも言えず、
投与再開時期とのおおよその一致もみられ、
用量の増加に伴って発現しています。

実のところ、近年、非小細胞肺癌に適応が拡大されたオプジーボ
(もしくはキイトルーダ)も検討したのですが、
この方はPD-L1が陰性(らしき医師の説明)だったので、
断念せざるを得ませんでした。

作用機序が全く違う事と、
治療成績が高いことから、
有望な選択肢だったのですが…。

現在使用中のEGFR阻害剤による(?)皮膚炎が消滅することも、
大いに期待されたところです。

なんだかEGFR阻害剤の悪口ばかりになってしまいました。

少し、フォローしておきますと、
分子標的薬は従来の抗癌剤と比較すれば、
かなり改良された薬と言えます。

〇9回目来局

舌紅ぜつこう舌苔ぜったいやや薄黄はくおう歪斜わいしゃ無し。

イレッサは2日に1回飲んでいる。

皮膚の状態は良くなっていない。

お出ししたのは、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包、晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日1包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、そして、竹葉石膏湯ちくようせっこうとう1日1包と五涼華ごりょうか1日1包」
です。

効果不十分より、

竹葉石膏湯ちくようせっこうとうの方を減量し、五涼華ごりょうかを加えました。

五涼華ごりょうか五味消毒飲ごみしょうどくいんという清熱せいねつの方剤ですが、

清熱せいねつだけでなく、
体の中の余分なものを引きずり出す作用があるので、
これをもって当たってみよう、
という考えで使用を試みてみました。
清熱せいねつとは熱と言われる、炎症傾向を制限する事をいいます)

しかしながらこの皮膚症状は、
EGFR阻害剤の影響である可能性が高いことから、
苦しさは否めません。

〇10回目来局

やはり足の下の側面に赤みがある(血行性に類似)。

今日は体温が36.9℃ある。日頃は36℃以下。

やはり抗癌剤は2日に1回しか飲んではいけないままなので、
腫瘍の縮小は無い。

舌ややこうあんばん舌苔薄ぜったいはく

お出ししたのは、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包、晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日2包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、そして、清営顆粒せいえいかりゅう1日3包」
です。

清営顆粒せいえいかりゅう清熱凉血せいせつりょうけつの方剤で、
通常の清熱剤せいねつざいと違って、血分けつぶんにある熱を取ることが出来ます。

血液の流れに沿っての炎症が見られるので、
こちらに変更致しました。

〇11回目来局

イレッサはやはり2日に1回、昨日から喉に熱さを感じる。

一旦中止していたランソプラゾールを飲んだらよくなった。

トイレに行くが睡眠は取れている。

睡眠薬は全く使わなくてよくなった。

実はトビエースは指示通りの夜ではなく、
朝がたに飲んでいる。

検査値は総蛋白・アルブミン・MCH低値(その日の9時16分に採血)。

舌暗紅ぜつあんこう歪斜わいしゃばん無苔むたい

漢方とは関係無い話になりますが、
トビエースの半減期は約10時間なので、
あまり早い時期に飲むと血中濃度が高い時が、
覚醒につながる夜間に低下するので、
指示通り飲む事をお勧めしました。

そうなのねと、
すぐに理解して頂け、
早速そのようにする事となりました。

そして、残念ながら皮膚の痒みはまだ良くならないとの事。

お風呂に入った時に痒みが強まると言われました。

お出ししたのは、
晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日2包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、清営顆粒せいえいかりゅう1日3包、そして地膚子じふし蛇床子じゃしょうし
です。

地膚子じふしは煎じで内服、
蛇床子じゃしょうしは外用で煎じ液で体を洗う目的です。

どちらも、痒みを目的としたものです。

しかしながら、その都度生薬を煎じるのは、
なかなかの手間です。

〇12回目来局

やはり、イレッサは2日に1回。

舌胖暗紅ぜつばんあんこう歪斜わいしゃ無苔むたい

喉元熱い。ランソプラゾールを飲めば一時回復する。

皮膚の痒みはまだ続くが、そんなにひどくは無い。

脳のMRIを近々取る予定。

CRP 高値、総蛋白・アルブミン・MCH低値。

でも、一人でスーパーに行けるぐらい元気。

お出ししたのは前回と同じで、
晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日2包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、清営顆粒せいえいかりゅう1日3包、地膚時じふし蛇床子じゃしょうし
です。

〇13回目来局

煎じるのは大変なので煎じないものでお願いしたいとの事。

イレッサは、
やはり2日に1回で飲むように言われている。

皮膚の痒みはまだあるとのことですが、
2、3日痒かったり、痒く無かったりといった感じで、
夜の方が痒めとの事。

検査値は概ね日頃の形になったのですが、
SCCが高いのがやはり気になります。

Drは余り気にしなくてもいいと言われたが…、
これは…何の数値なのでしょう?
癌に関係するものらしいのですが…
との事。

まず、SCCはSquamous Cell Carcinoma(扁平上皮癌へんぺいじょうひがん)の略で、
これは扁平上皮癌へんぺいじょうひがんの腫瘍マーカーである事をご説明しました。

腫瘍マーカーとはある特定の物質を測定することで、
腫瘍の良否を判断する指標のことです。

基準値1.5までに対し、
ご本人の検査値は1.6なのでDrの言われる通り、
深刻な値では無いと思う事。

しかしながら、低いに越したことはない事などお話しました。

煎じは大変なので今回お出ししたのは、
晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日2包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、そして紫根牡蛎湯しこんぼれいとう1日3包、亀鹿仙きろくせん1日1包」
です。

紫根牡蛎湯しこんぼれいとうは皮膚炎の処方ですが、
抗癌作用を期待できる生薬が入っているので、
一石二鳥です。

そして、方剤構成の意義として大きいのが、亀鹿仙きろくせん

亀鹿仙きろくせん補陰ほいん力に極めて優れたもので、
ずっと早くお出しした方がいいのではないかと思っていたものです。

なぜ、後回しにしたかというと、
まずは熱の制御を急ごうと思っていた事と、
これは値段が高いこと、
そしてお忘れかもしれませんが、
最初の方で書いたように、
気血双補きけつそうほ人参養栄湯にんじんようえいとうが常に併用されていたので、
最初からそれだけでは不十分…
と決めつけるのは良くないだろうと思ったのが、
その理由です。

この亀鹿仙きろくせんの1手は今後の事を考えて、
重要な意味をもっています。

熱が有れば熱を制するのが基本ですが、
熱が生まれてくる原因の1つに、
陰虚いんきょがあります。

この方の舌は概ね無苔むたいで、
陰虚いんきょを強く感じさせます。

ただ、概ねばんの舌象も続いており、
ばん気虚ききょを疑わせます。

先の人参養栄湯にんじんようえいとう補気剤ほきざいが入っている事を考えると、
この方にはそもそも熱象ねつぞうがあるので、
気虚ききょの方はこちらだけにお任せして、
先ずは熱を自ら制する事のできる補陰ほいんの方を、
優先する事としました。

ここで、
熱象ねつぞうとは何ぞやという事ですが、
この方だと、
舌質ぜっしつ(舌の肉そのもの)が赤い(舌紅ぜつこう)、
癌による炎症、
皮膚の痒み、
などの炎症傾向の事となります。

その熱象ねつぞう補気剤ほきざいを早期から大量にかけると、
熱象ねつぞうが悪化する可能性があるので、
優先順位を下げたという訳です。

その点、補気補血ほきほけつが、
ほぼ「釣り合っている」人参養栄湯にんじんようえいとうは、
なかなか良いのではないかと思うところです。

また、亀鹿仙きろくせん軟堅酸結なんけんさんけつをもっており、
軟堅酸結なんけんさんけつとは何かといいますと
腫瘍などの塊を除去する作用を言います。

この辺りも、
この方にとって重要な意味を持ってきます。

〇14回目来局

舌胖紅ぜつばんこう無苔むたい薄黄はくおう

今回、肺癌のある所とは逆の肺に、
すりガラス様の陰影が見られる。

イレッサの副作用である間質性肺炎がかなり疑われるので、
イレッサは中止する事となった。

MCV87.3、MCHC28(低値)、血色素11.7(低値)、SCC0.6
皮膚の乾燥変わらず、運動負荷で息切れは無い、寒気も特になし。

風邪症状無いが、咳は時々出る。

痰はからまないが、喉が乾燥するわけでもない。

喀出しにくく、白っぽい痰。

これは、イレッサで有名な間質性肺炎の副作用である可能性が、
極めて高いと思います。

イレッサは間質性肺炎を起こす薬の代表的なものだからです。

ここは、最優先で間質性肺炎の治療を行う必要があります。

今回お出ししたのは、
晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日2包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、亀鹿仙きろくせん1日1包そして、潤肺糖漿じゅんぱいとうしょう1日2回です」

亀鹿仙きろくせん+潤肺糖漿じゅんぱいとうしょうは、肺腎双補の組み合わせです。

間質性肺炎は確かに肺の疾患ではありますが、
かなり危険な疾患です。

ゆえに潤肺糖漿じゅんぱいとうしょうだけという訳には参りません。

亀鹿仙きろくせんとの併用が必須だと思われます。

この辺りは実に漢方らしいところなのですが、
肺の疾患で腎を補うのは、
病状の重い肺疾患でよく行われます。

特にこの方は、
陰虚体質なので、
水を主る腎を補う事は、
大きな意味があります。

また、漢方では腎は納気のうきを主るので、
そもそも肺と深い関連性があります。

現代医学の感覚とは異なるので、
少々説明を付けたしますと、
漢方では吸気は腎に下らなければならず、
これを行っている腎の働きのことを「摂納せつのう」といいます。

このことから腎は納気のうきを主るといいます。

それゆえ、腎の肺への協力があって肺の呼吸機能は完成されるといえます。

すでに飲んで頂けていたのは幸いです。

今回は1日1回ですが、
効果不十分であれば、
ためらわず増量していく必要があると思います。

〇15回目来局

舌奥 苔薄黄・舌辺右 苔薄白・
その他の場所は無苔で暗・左の舌辺に縦に紫の線を認める、
舌紅胖。

KL-6は218U/ml(上限500U/ml)、

 

 

 

病院の薬変化ないが、
やはりイレッサは中断している。

痰の絡みが減少してきた。

風邪様症状無し。

皮膚の痒みは時々ほんの少しあるくらいに減少。

今回お出ししたのは、
晶三仙しょうさんせん1日3包、田七人参でんしちにんじん1日2包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、亀鹿仙きろくせん1日2包、潤肺糖漿じゅんぱいとうしょう1日2回、そして、白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包」
です。

亀鹿仙きろくせんは1日2包に増量し、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包を追加した形になっています。
亀鹿仙きろくせんを増量したのは全体的無苔傾向のより一層の改善を図ってのもので、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそうを再開したのは、
抗癌剤イレッサが完全に中止になっているので、
これでは癌の方が野放しになっているので不安であるという声を受けての事です。

そのご不安、
ごもっともです。

〇16回目来局

舌苔薄黄、やや紅、胖。

昨日と1週間まえに眩暈がした。

テレビ画面が動くような眩暈、回転性。

10分くらいしたら戻った。

30年くらい前にメニエール病の眩暈を起こしたことがある。

動くとドキドキした、
こんなことは今日が初めて。

痰無し、息切れ無し。

冷え症状は服を着ていて寒いという事は無いので大丈夫だと思う。

夕方お腹が痛くなったが便は普通だった。

頭が重たいようなときがあるが、痛むという訳でない。

食事とは関係なく、良くゲップがでる。

食欲は問題ない。

間質性肺炎の治療は病院では全く行っていないが、
肺のすりガラス様の陰影は消えた。

心臓の異常は病院で指摘された事は無い。

心電図もハッキリとは覚えていないが、
問題なかったと思う。

咳も出る日と出ない日がある状態になってきた、
との事。

まず、メニエール病らしきもの(?)ですが、
1ヵ月間に2回で、
症状は10分ぐらいで回復しているので、
慢性的な経過ではないだろうと思われます。

けれど少し精神的な安定を図り、
体質を強化する必要があると思います。

間質性肺炎の方はかなり予後良好を感じさせる報告です。

ステロイド治療をされる可能性もあったのですが、
どうやら必要なさそうな様子です。

そこで今回お出ししたのは、
晶三仙しょうさんせん適宜、田七人参でんしちにんじん1日2包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、亀鹿仙きろくせん1日2包、潤肺糖漿じゅんぱいとうしょう1日1回、白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包、そして香西洋参しゃんせいようじん1日1包」
です。

晶三仙しょうさんせんは食欲が回復しているので食べられなければ飲むといった形に変更し、
潤肺糖漿じゅんぱいとうしょうは肺の機能が回復しているので1日1回と減量し、
香西洋参しゃんせいようじんを追加しました。

香西洋参しゃんせいようじんは涼性の補気作用をもつので、
エネルギー不足を補っても、
興奮性を助長する心配がほとんどないものです。

間質性肺炎が軽快に向かっているとは言え、
気の取り込みが全く落ちていないという事はないでしょうから、
補気して、興奮をやわらげる涼性の香西洋参を選択いたしました。

〇17回目来局

舌苔薄黄、やや暗紅。

肺癌の影は約1年前よりは薄くなってきたとDr。

抗アレルギー剤は新薬のルパフィンになったからか、
皮膚の痒みはあるが、比較的軽度で安定。

咳は時に全くない日もある。

癌でかかっている方でない病院で元気をつけたいといったら、
ツムラの補中益気湯(1日7.5g)を出してくれた。

少し、飲むものの種類が多いので整頓したい、

との事。

そこで今回お出ししたのは、
晶三仙しょうさんせん適宜(ほぼ必要なくなってきている)、田七人参でんしちにんじん1日2包、延寿丸えんじゅがん(便秘時積極使用)、亀鹿仙きろくせん1日2包、白花蛇舌草はくかじゃぜつそう1日3包、そして半枝蓮はんしれん1日2回」
です。

補中益気湯ほちゅうえっきとうが病院で処方されているので、
のぼせなど起きていないかを確認したところ、
大丈夫であるとの事。

補中益気湯ほちゅうえっきとうは若干温性に偏りますが、
人参湯にんじんとうのようにハッキリ温性でもなく、
六君子湯りっくんしとうのようにハッキリ化痰作用があり、
陰虚いんきょを悪化させるわけでもなく、
併用は許容できると思います。

前回うちでお出しした香西洋参しゃんせいようじんの方が、
涼性なので安全性が高いですが、
特に問題が発生してないので、
ここは補中益気湯ほちゅうえっきとうにお任せする事にとし、
香西洋参しゃんせいようじんは削除することにしました。

先程の「飲むものを少し整頓したい」というご希望も、
考慮いたしました。

そして、半枝蓮はんしれんを追加。

「あまりなじみがない」という方もいらっしゃると思いますので、
少々説明を加えさせて頂きまと、
半枝蓮はんしれんとは、
(今回すでに飲んで頂いている)白花蛇舌草と一緒に、
民間療法でよく使かわれるもので、
白血球やマクロファージ等の機能を高め、
リンパ球の数や働きを増して免疫力を高めるといわれているものです。

ゆえに各種腫瘍に使われ、
飲み易さも手伝って、
台湾や中国では昔から排膿、抗炎症、解毒、殺菌作用、ヘビによる咬傷を治すことにも、
白花蛇舌草はくかじゃぜつそう半枝蓮はんしれんは民間薬として使われています。

もちろん、肺がんに対する効果も示唆され、
あちこちで使用されております。

現段階で分かっている作用機序は、
半枝蓮はんしれんエキスは嫌気性解糖系を阻害するので、
癌細胞の方だけを重点的にエネルギー不足に追い込むということです。

これはどういうことかと申しますと、
正常な細胞はエネルギーの産生に主にクエン酸回路を用いますが、
癌細胞は嫌気性解糖系を経て生産されるエネルギーにかなり頼っています。

そして研究によって、
培養したがん細胞に半枝蓮はんしれんエキスを添加すると、
ATPが枯渇することが分かり、
嫌気性解糖系を経てエネルギーをつくる経路の方だけが
妨げられていること判明しました。

なので、
癌細胞には細胞死が起こるが、
正常細胞はほぼノーダメージという事になります。

今回、白花蛇舌草はくかじゃぜつそうの効果を高めるためこの半枝蓮はんしれんを用いたのは、
上記の作用機序と、
昔から併用療法が良く行われた歴史があることが理由です。

また性が寒である事もありがたいです。

なぜなら、
この方の「熱を意味する舌紅ぜつこう」が、
なかなか改善されないのが気になりますし、
やや温性の補中益気湯ほちゅうえっきとうが追加になったことから、
ただ熱を制限するだけのものを別に加えずに、
熱の制限を強化できるからです。

ここで白花蛇舌草と田七人参について補足いたしますと、
どちらもイスクラというメーカーのものを使用しております。

白花蛇舌草は1包が原生薬4gに相当いたします。

また田七人参の方は1包が田七人参末2gに相当します。

因みに田七人参の方は途中から500gの大きい田七人参末を使われています。

世の中大きいサイズの方が基本的に割安です。

ちょっと減り方がゆっくりなのが気になるところです。

舌の暗がなかなかよくならない事からも、
ちょっと飲み忘れがあるのでしょう。

早く暗が取れて必要なくなると良いです。

最初の数回をを除き約1ヵ月おきに来局されておりますので、
本来ならば田七人参は無くなっているはずなのです。

まだ、続いていきますが、
原稿をまとめるのが終わりしだい、
書き足していく予定です。

もうしばらくお待ちください。

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